カーポートの建設を検討している方で、固定資産税の課税対象になるのか気になっている方もおられるのではないでしょうか。固定資産税の課税対象となるか否かは、要件を満たしているかどうかで決まります。
本記事では、カーポートと固定資産税の関係や固定資産税がかかる建物の要件、対象外となる建物の特徴について解説します。また、カーポートを建てる際に注意すべきポイントについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

カーポートに固定資産税はかかる?
一般的なカーポートに固定資産税が課されるケースはほとんどありません。しかし、カーポートが住宅の建ぺい率に影響を与える可能性はあります。
建ぺい率とは、敷地内に建てられる建物の面積が敷地全体に占める割合です。たとえば、建ぺい率が50%の場合、敷地の半分までは建物で占めることが可能です。
カーポートを建築物とみなす場合、この割合に含まれるため、利用できる敷地が減少します。しかし、開放性が高い建物については、緩和措置が設けられており、特定の条件下では建ぺい率の計算において優遇されます。
多くのカーポートは緩和措置の対象となる場合が多いですが、具体的な適用については地域の条例や規定を確認してください。
固定資産税がかかる建物の要件は3つ
次に、固定資産税がかかる建物の要件について解説します。
- 外気分断性がある
- 土地への定着性がある
- 用途性がある
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.外気分断性がある
外気分断性とは、建物が外気を遮る構造の建物を指します。具体的には、屋根があり、さらに3方向以上の壁で囲まれている状態です。この条件を満たす建物は、外気からの影響をある程度遮断できると考えられ、固定資産税の対象になります。
一方、屋根のみが存在し、壁がない構造の建築物は、外気分断性が認められないため、固定資産税の課税対象外です。一般的なカーポートの場合は、3方向以上の壁で囲まれていないため、外気分断性があると判断されません。カーポートは、この外気分断性という観点で固定資産税の対象外となります。
2.土地への定着性がある
建物が土地に固定されており、容易に移動できない状態は定着性があると判断されます。たとえば、基礎や柱によって土地にしっかりと固定されている建物です。
カーポートのように柱で土地に固定されている構造も、土地定着性の要件を満たすと考えられます。これに対し、地面に置かれているだけの物置やコンテナは、定着性が認められないため、通常は固定資産税の対象外です。
このように、建物が固定資産税の課税対象となるかどうかは、その土地への定着度によって大きく左右されます。
3.用途性がある
人が居住するため、あるいは物を貯蔵するためなど、実際に用途が存在する状態の建物が該当します。用途性は建物の機能性と直結しており、建物がどのように活用されているか、活用され得るかが評価の基準です。
たとえば、カーポートは主に車を雨や日差しから保護するために使用されます。この点で、カーポートは車庫としての特定の用途、機能を持っているため、用途性があるとみなされるわけです。
このように、建物が具体的な用途を持ち、それに応じた設計や構造になっている場合、固定資産税の課税対象としての要件を満たします。
固定資産税の対象外となる建物の特徴は3つ
次に、固定資産税の対象外となる建物の特徴について解説します。
- 課税要件を満たさない
- 1月1日(賦課期日)時点で存在していない
- 免税点に満たない
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.課税要件を満たさない
課税要件とは、「外気分断性」「土地への定着性」「用途性」という3つの基準で1つでも欠ける場合、その建物は固定資産税の課税対象外となります。つまり、いずれの要件も満たさない建物は、税の対象には含まれません。
たとえば、空きスペースに置かれた物置は、土地に恒久的に固定されていないため、定着性が欠けています。また、壁がなく屋根だけのカーポートは外気分断性を有していないとみなされます。増築されたルーフバルコニーも同様に外気分断性がないため、課税の対象外です。
ただし、地面にしっかりと固定された物置や、壁が設けられたガレージタイプのカーポートは、これらの要件を満たすため、固定資産税が課される場合があります。
2.1月1日(賦課期日)時点で存在していない
賦課期日に建物が存在していなければ、その年に固定資産税は課せられません。たとえば、1月1日時点ではまだ建築されておらず、1月2日に建設が完了した建物は、その年の固定資産税は対象外です。
しかし、次の年の1月1日にその建物が存在していれば、その時点から固定資産税が課されます。この原則は、建物の解体を考える際にも適用されます。たとえば、ある建物を12月31日までに解体すれば、翌年の固定資産税を支払う必要がありません。
3.免税点に満たない
固定資産税では、免税点という制度が設けられており、特定の評価額に達しない小規模な資産に対しては課税されない仕組みになっています。具体的には、固定資産の種類に応じて設定された金額以下の場合、その資産に対しては固定資産税が免除されます。
この免税点制度は、小規模な資産所有者に対する負担軽減が目的です。たとえば、評価額が低い小さな建物や古い家屋などがこれに該当します。
カーポートを建てる際に注意すべきポイントは3つ
次に、カーポートを建てる際に注意すべきポイントについて解説します。
- 建築確認申請が必要な場合がある
- 隣地境界線から一定の距離が必要になる
- 建ぺい率は地域によって異なる
それぞれについて詳しくみていきましょう。
1.建築確認申請が必要な場合がある
建築確認申請は、計画された建築物が法的な基準に適合しているか事前にチェックするためのプロセスです。カーポートの設置も、その規模や構造によってはこの申請が求められるケースがあります。
なお、申請プロセスは、以下のとおりです。
- 着工前書類確認
建築主は建築確認証を受け取ることでカーポートの建設を開始できる
- 工事終了後、現地検査の実施
問題がなければ検査済証が発行される
多くの場合、この申請プロセスは複雑で専門的な知識が要求されるため、建築主は専門の業者に依頼するのが一般的です。
なお、カーポートの建築確認については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:カーポートに必要な建築確認申請とは?申請が必要な条件や申請しない場合の罰則を徹底解説!
2.隣地境界線から一定の距離が必要になる
これは民法に基づく規定であり、建築物は隣地境界線から最低50cmは離して建てなければなりません。この規則は、隣接する土地の権利を尊重し、両者の間でのトラブルを防ぐために設けられています。
カーポートを設置する際には、法的な距離を必ず守らなければなりません。隣地との距離が不足していると、将来的に法的な問題に発展する可能性があり、建築後に修正が必要になると追加のコストが発生します。
3.建ぺい率は地域によって異なる
建ぺい率とは、土地に対する建物の占める面積の割合を指し、地域ごとに定められています。たとえば、建ぺい率が30%の地域では、土地面積の30%までしか建物を建てることができません。
建ぺい率が厳しく制限されている地域では、カーポートを含めた建物の総面積が基準を超えないよう細心の注意が必要です。建ぺい率を超えてしまうと、住宅の建設スペースが不足するだけでなく、法的な制裁を受けるリスクもあります。
カーポートの固定資産税でよくある3つの質問
最後に、カーポートの固定資産税でよくある質問を紹介します。
- 質問1.建ぺい率は固定資産税に関係ある?
- 質問2.ガレージは課税対象になる?
- 質問3.ソーラーパネル付きのカーポートに固定資産税はかかる?
それぞれについて詳しくみていきましょう。
質問1.建ぺい率は固定資産税に関係ある?
建ぺい率が固定資産税に直接課税されることはありません。「カーポートが建ぺい率に含まれる」という話題と「カーポートには固定資産税がかかる」という誤解がこのような誤った認識を広めていると推測できます。
カーポートが固定資産税の課税対象になるケースはほとんどないものの、建ぺい率が上限に近い土地では、カーポートを建てることで許容範囲を超えるリスクがあるため注意が必要です。
質問2.ガレージは課税対象になる?
ガレージが固定資産税の課税対象になるかは、構造によって異なります。以下の点を考慮して、ガレージの税務上の扱いを確認しましょう。
- シャッター付きのガレージ
基礎工事が必要で車を保管する用途があるため、土地定着性と用途性を満たしている。また、3方向以上が壁で囲われ、シャッターで閉鎖できるため、外気分断性も認められる。よって、課税要件をすべて満たすため、固定資産税の課税対象となる
- シャッターのないガレージ
土地定着性と用途性は満たしているが、外気分断性がポイントとなる。3方向が壁で囲われていない場合は外気分断性を満たさず、固定資産税の課税対象外となる
質問3.ソーラーパネル付きのカーポートに固定資産税はかかる?
太陽光発電パネルを設置したソーラーカーポートに、固定資産税が適用されるかは設置されている太陽光発電パネルの規模によって異なります。
基本的に、カーポート自体には固定資産税が課されませんが、太陽光発電パネルに関しては別の扱いがなされます。10kW以上の太陽光発電システムは、事業用の償却資産として認識され、固定資産税が課税されるケースが一般的です。
一方で、10kW未満のシステムは主に住宅用とみなされ、通常は固定資産税の対象外です。しかし、太陽光発電システムの発電能力が高いと、その用途に関わらず事業用資産とみなされるケースもあるため、専門家へ相談しましょう。
まとめ
本記事では、カーポートと固定資産税の関係や固定資産税がかかる建物の要件、対象外となる建物の特徴、カーポートを建てる際に注意すべきポイントについて解説しました。
カーポートが固定資産税の課税対象になるケースはほとんどありません。固定資産税の課税対象になる建物は、「外気分断性」「定着性」「用途性」の3つをすべて満たしている建物に限定されます。
カーポートの場合は、3方向以上が壁で囲われていないため、「外気分断性」を満たしていません。ただし、シャッター付きのガレージは、3方向以上が壁で囲われており、「外気分断性」「定着性」「用途性」のすべて満たすため、固定資産税の課税対象になります。
